国境①

地図を見ていて、国境を見てふと頭に浮かんだこと。
多文化共生だとか国際化社会だとかに憧れる人は少なくないみたいで、
そういう人々は、
「世界中の誰でも皆同じ人間だから、
国境を越えて、文化の違いを超えて、
心を開いて話せば通じ合える。」
といった美しい理想物語を信じ、
その思想を世界中に広めることや、
実際に人々が国境を越えて、
一つの国に様々な文化の人々が共生する事が良い事だ、
と思っているみたいですが、
そんな事をすればするほど、逆に、
心の中に国境が、超える事が不可能な国境が、
築き上げられていく・・・・・
と、色々な人との出会いと経験を通して、
虚しさとやるせなさを感じつつ思うのです。

世界各国から人々が集まるグローバル企業で働いたり、
世界各国から留学生が集まる大学へ通ったりすると、
多文化な環境を経験する事が出来ます。

そういう場で出会う様々な国出身の外国人たちは、
母国語や、文化や、宗教や、人種など、色々な事が
全く違うというのに、不思議なくらい違和感なく、
普通に交流出来、協力しあったり、冗談をいいあったり、
一緒に食事に行ったりもします。
そこにはもちろん人種差別も無く、無視も無く、
お互いみな礼儀正しく感じよく振る舞っています。
そればかりか、母国からの珍しいお菓子をくれたり、
行ったことのない外国の話を教えてくれたりしますし、
楽しく異文化に触れられて、なんだか特別な素晴らしい経験を
してしまっている気分になれるでしょう。

そして、多文化の環境は素晴らしいな、楽しいな、
人間みな同じなんだな、話せばわかるんだな、
国も人種も宗教も全然関係ない、
そんなの心を開けば簡単に乗り越えられる、
と思うようになってもなんら不思議ではありません。

しかし、国や文化が違っても違和感を感じず交流できる事、
それには訳があるのです。
企業では、同じようなレベル、興味の対象が似通った人間が集まります。
採用時には、周囲と協調できそうな人物が選ばれます。
だから違和感を感じなくても当然なのです。
就業規則には、人種差別を禁止する項目があったりします。
周囲から評判が良いと昇進、昇給のチャンスは増え、
評判が悪いとクビになる可能性が高まります。
世界的企業で働く人の中には高い教育を受けている人も多く、
心の底はどうであれ、表向きには
政治的に正しく振る舞う事の重要さも理解しています。
せっかく得た有名企業、大企業での職を失うなんてもったいない、
生活のため、昇進のため、ステイタスのため、保身のため、
欲しい物を手に入れるためには、仕事だと割り切って
どんな態度でも取ろうと賢く割り切り振る舞います。

つまり、同じようなレベルで、周囲に馴染めそうな人物ばかりが
いる環境であり、周囲からの評判を気にする環境である。
「従業員」の役割をする場であり「素の自分」でいる訳ではない。
だからそんな場所では、多文化だろうが外国人だろうが、
違和感を感じず交流がしやすいのです。

そんな特殊な環境と、ごった煮状態の一般社会を
同一と見る事は出来ません。

難民まみれ貧国移民まみれのスウェーデン語のクラスは、
入試や面接も関係なく、基本どんな能力のどんな人物だろうが入れる、
多国籍、多文化の環境でした。
しかし、みな同言語、同宗教、同民族、同人種で固まりがちで、
派閥を作るものもおり、国や文化を超えて、
お互いが尊重しあい、協力しあい、理解しあう、
手と手をとりあう美しい多文化共生では決してありませんでした。

だからといって目立った諍いがある訳ではありませんが、
「あの人は私と同民族じゃないから。」みたいな感じで、
なるべく近寄らない、関わらない、興味ない、みたいな感じです。
陰では「あの人と口きいちゃだめだよ。」だの、
他民族や他文化を否定する話だのはあったりしましたが。

私はクラスに同民族がいなかったので、同様に同民族がいなかったり、
同民族でも異性のため派閥にならずにいた生徒と
同じクラスの間だけあっさりと関わっていました。

国境を越えて様々な国からやって来た様々な人々が
同じ教室で同じ勉強を一緒にした訳ですが、
不思議な事に、人間関係は自然と、
国境で分けられたかのごとくに分裂していたのです。
一見して、
「国境や文化の違いを超えて皆一緒に仲間として協力しあう多文化共生」
のように見えなくもない光景でしたが、
心の中には国境が出来ており、それを超える事が無かったのです。
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スウェーデン在住のBraです。海外在住ブロガーやフリーライター、その他メディアがあえて伝えない、書きたがらないスウェーデンの一面を主に取り上げています。

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